ペンタックス K-7 は、APS-Cサイズ相当のセンサーサイズや約1,460万画素というスペックこそK20Dと同じだが、センサーをはじめとする主要デバイスのほとんどが新規開発という意欲作である。K20Dと同じミドルクラスだが方向性は異なり、「新時代のミドルクラス」 とでも言うべき新しい価値観を目指した。「K30D」 ではなく、「K-7 」 という一桁番台のカメラ名にしたあたりにもそれが現れている。
K-7 で驚くべきは、そのコストパフォーマンスだ。視野率100%ファインダーなどのハイスペックを考えると明らかにバーゲンプライス。他社を含めミドルクラス一眼レフの今後を問う、それが K-7 だ。
K20Dはクラス平均の大きさだったが 「ペンタックスにしては大きい」 と評価された。K-7 は 「ペンタックスらしく」 小型軽量だ。とくに横方向で10mm以上も小型化されたのは感覚的にも効果絶大で、とても小さく感じる。重さもかなり (約50g) 軽量化されている。
デザインは直線主体でエッジを明確にした造形。とくにペンタ部は、同社の歴史的名機である 「LX」 を思い起こさずにはいられない。
操作は、評判の良かった[Fn]ボタンによる主要設定へのショートカットをキッパリとやめ、ISO感度やWBなど操作頻度の高い設定へは専用ボタン+電子ダイヤルのダイレクトアクセス方式に変更された。実際、K-7 の主要操作はとても分かりやすいので、迷うことは少なかった。ハイパープログラムなどペンタックスならではの操作性は継承されている。
防塵防滴構造はより強化された。K20Dで72箇所だったシーリングを77箇所へ増やしている。耐寒性能もマイナス10℃までと頼もしい。ボディ外装はK20Dの樹脂からマグネシウム合金となり、耐衝撃性を向上させると同時に電子部品の発する熱を効率よく放出。金属製になったことで道具としての質感も向上した。
撮像素子はサムスン製の有効約1,460万画素CMOSで新規開発品。読み出しラインを4チャンネルに増やすことで、連写時のコマ速はK20Dの約3コマ/秒から約5.2コマ/秒へと大幅にスピードアップした。手ブレ補正はセンサーシフト式 「SR」 (シェイクリダクション)でシャッター速度換算最大約4段分と効果は変わらないが、ボディのホールドがよくなったせいか実写テストでは補正が向上したような結果が得られた。
常用感度はISO100〜3200、カスタム設定の感度拡張によるISO6400はK20Dと同じ。ISO6400時のノイズは、K20Dで気になったカラーノイズではなく輝度ノイズが中心。ノイズリダクションを[強]にしてもカラーノイズが残るK20Dより効きがいいようだ。
K-7 ではSRを利用して 「自動水平補正」 と 「構図微調整」 機能を実現した。前者は検出したカメラの傾きを打ち消す方向にセンサーを自動回転させる。後者は三脚にカメラを固定後、ライブビューで画像を確認しながらセンサーを上下左右および回転方向へ任意に動かして構図を微調整できる。三脚使用時は雲台のロックネジを緩めるだけで構図が微妙に変わってしまうことがよくあるので、カメラを固定した後に構図を調整できるのは非常に便利だ。両機能とも磁力により撮像素子を浮かせている 「SR」 だからこそ実現できた機能だ。
ペンタックス一眼レフのAWB (オートホワイトバランス) はこれまでその場の雰囲気を残すタイプで、白熱電球下の撮影などでも意識的に赤みが残されていたが、K-7ではAWBの効きが強くなり、白熱電球の赤みもかなり白っぽく補正するようになった。これは新しくWBプリセットの選択肢に加わった[CTE]モードとの住み分けを考えたためだろう。CTEは Color Temperature Enhancement の略で、光源の特徴を誇張し、色を強く残す方向へ補正する。夕日の撮影の場合、いままでは赤みを強調するためにWBを 「日陰」 にして撮ったりしていたが、CTEなら色味と色温度の関係を知らなくても光源の色味が強調される。実際に白熱電球で試してみたが、AWBでは白っぽいニュートラルな色味になるのに対し、CTEでは思い切り赤み方向に振れた色味になった。K20Dまでの 「その場の雰囲気を残す」 AWBに慣れている人は注意が必要だ。
なお、K-7ではカスタムメニューで白熱灯下のAWBを[弱] (初期設定) と[強]の2種類から選択できるが、どちらの場合でもK20Dほど赤みは残さないようだ。
全11点測距 (9点クロス) のAFセンサー 「SAFOX VIII+」 は、K20Dの 「SAFOX VIII 」 と大きな違いはない。ただ、アルゴリズムは大幅に改良され、AF速度が向上、暗いシーンでも迷わず合焦するようになった。また、センサーそのものに光源判別機能を持たせたことで、水銀灯などの特殊な光源下におけるAFの合焦精度も向上しているという。新しくAF補助光ランプもボディに搭載された。
ライブビューについては、位相差AFのみだったK20Dと異なり、コントラストAFも可能になった。試用したベータ機のコントラストAFはピントの前後動作が大きく、お世辞にも高速とは言えなかったが、個人的には多少AF速度が遅くても、ミラーの上下動作がなくAF精度も高いコントラストAFのほうがライブビュー撮影には適していると思う。もちろん液晶モニターが3.0型・約92.1万ドットへ大型&高解像度化され、ライブビューの快適度が飛躍的にアップしている。
K-7 は顔検出AFも搭載した。検出できる顔は最大16人で、主被写体を検出することも可能。コントラストAFではAFフレームを画面上の任意の位置に移動できるが、顔検出AFならAFフレームが自動的に人物の顔部分に移動してくれるので、ライブビューの使い勝手がアップする。
とくに広角レンズでは歪曲収差により直線が曲がって写ってしまうことがあるが、歪曲収差を撮影時に補正してくれる 「ディストーション補正」 機能が加わった。撮影メニューの[レンズ補正]→[ディストーション補正]で簡単に設定を行える。補正できるレンズはDA、DA L、D FAレンズ。接写リングやリアコンバーター等を使用した場合は補正機能は無効になる。なお、歪曲収差が持ち味の魚眼レンズ 「DA FISH-EYE 10-17mmF3.5-4.5ED[IF] 」 装着時も無効になる。
フィルムを選ぶように描画や色味を変えることができるカスタムイメージはK20Dにもあった「鮮やか、ナチュラル、人物、風景、モノトーン、雅」に加え、<ほのか> が新たに加わった。<ほのか> は彩度とコントラストを大きく落とすことで、明暗差の極端に少ないフラットな描写になるのが特徴。また、各カスタムイメージは従来同様に彩度やコントラスト、シャープネスなどの微調整にくわえ、K-7では新たに効果そのものの強弱を調整できる「キー」を新装備した。
一眼レフの動画機能はもはや珍しくないが、K-7にも動画撮影機能が搭載された。記録サイズは1,280×720ピクセル (アスペクト比 16:9)、1,536×1024ピクセル (3:2) 、640×416ピクセル (3:2) 3サイズで、フレームレートは30fps。音声はカメラの内蔵マイク使用時はモノラルだが、市販のステレオマイクを接続すればステレオ録音も可能。
また、絞り制御にステッピングモーターを使うことで、絞り羽根の連続可変動作を可能にし、動画撮影中に露出が変化しても明るさが滑らかに変化するように工夫されている。ちなみに絞りを設定した動画撮影も可能で、この場合はゲイン調整によって露出が最適化される。<雅>や<ほのか>といったカスタムイメージ設定も可能で、動画に対しても多彩な画作りが行える。また、動画撮影中でもボディ内手ブレ補正が有効なのもすごい。
唯一、動画撮影中のAFが行えないのは残念だが、ペンタックスの個性的なレンズ群を駆使して撮る動画は楽しいものになるかもしれない。
(河田一規)