EOS 5D Mark II は、言わずと知れたフルサイズ機 EOS 5D が3年以上の月日を経てフルモデルチェンジした2代目。筆者も発表と同時に予約、購入して今日まで使い込んできた。
36×24mmの撮像素子サイズ、約2,110万画素の画素数はプロ仕様のEOS-1Ds Mark III (平成19年11月29日発売) と同じ。1Ds Mark III と同一条件で撮り比べてみると、低感度では互角の画質。しかし高感度域ではさすがに設計が最しい機種だけあって、EOS 5D Mark II の方が長足の進歩を見せた。
高感度特性の良さは ISO感度設定にも活かされ、1Ds Mark III の常用感度が ISO1600 (拡張機能でISO3200相当) までであるのに対し、5D Mark II は ISO6400 までの設定が可能。さらに拡張により ISO25600相当まで設定できる。また、新世代画像エンジン DIGIC 4 による機能と思われるが、高感度撮影時のノイズ低減効果が、DIGIC III 搭載機の [する] [しない] の 2段階から発展し、[しない][弱め][標準][強め] の 4段階となっている。効果の度合いについてキヤノンに問い合わせたところ、[標準] が従来の [する] より若干効果が高いとのこと。ということは [強め] は従来の [する] よりもさらに高いノイズ低減効果を期待できることになる。
また特筆すべきは、これも DIGIC 4 の性能によるものか、1Ds Mark III で [する] に設定するとバッファメモリーにためられる連続撮影可能枚数が約半分になってしまったのに対し、5D Mark II では[標準] でも連続撮影可能枚数は変わらない。1Ds Mark III ではノイズ低減を優先するか連続撮影を優先するか常々悩んだものだが、5D Mark II ではその悩みから開放された (ただし [強い] を選択すると連続撮影可能枚数はやはり約半分になってしまうが) 。
シャッターのレスポンス、画像消失時間、各種設定のレスポンスは実用上は十分だが、1Ds Mark III には一歩ゆずる感じだ。光学ファインダーで撮影する際の位相差AFは、ちょっとした逆光でかなり迷い、ピントが合うまでけっこうな “時間" を要することがあるが、合焦の “精度" は 1Ds Mark III 以上の印象だ。
記録メディアはコンパクトフラッシュカード。UDMA対応となり、相性の良い高速なCFカードを用いればRAW形式でテンポ良く連続撮影しても、バッファ・フルでシャッターが切れなくなるような事態は滅多に起こらない。
RAWの記録画素数は 3段階に設定できる。通常のRAWは5615×3744の約2,100万画素だが、必ずしも最大画素数が必要でない場合には、記録画素数もファイル容量も小さい sRAW1 (約1,000万画素) 、それより小さい sRAW2 (約520万画素) と選択肢が 2つ増えた。
もっとも、sRAW1、sRAW2 をキヤノン純正のRAW現像ソフト 『Digital PhotoProfessional』(以下DPP)で現像するかぎりは、(フル画素の)RAWと同一の処理が行えるものの、他社製RAW現像ソフトだとRAWとSRAW1、sRAW2が同じ撮影条件、同じ現像設定でも色調等が異なる結果に現像されてしまう場合があった。DPP以外の現像ソフトを用いるなら、sRAW を選択しない方が無難のようだ。
専用リチウムイオン電池には新型のLP-E6 が採用された。容量・パワーともアップされたようだが、それよりも電池の残容量表示が [0〜100%] となり、充電後の撮影枚数が表示されるようになったことを歓迎したい。ただ、電池管理が格段に良くなったぶん、従来のLP-E4 やBP-511A といった電池との互換性はなし。ボディ内蔵はともかく、せめてバッテリーグリップBG-E6 では従来の電池も使えるようになっていればうれしかったのだが…。
なお、バッテリーグリップBG-E6 には専用電池が 1個または 2個、あるいは付属の単3形電池ホルダーを用いて単3形電池 6本が入れられる。専用電池を 2個入れた場合は、それぞれの残量がボディの液晶画面に表示される。
単3形電池にサンヨーのエネループを使い電池の保ち具合を比較したところ、エネループ 6本で専用リチウム電池1個と同等、という感じだった。なお、単3形電池使用時にはシャッター幕を開けてブロア等による手動でのセンサー清掃が行えないように規制されていることを知っておく必要がある。
もっとも、手動によるセンサーの清掃の必要性はほとんど感じない。1D Mark III で初搭載された、超音波によるセンサークリーニング、ゴミが付着しにくいローパスフィルター、シャッター幕などへのゴミが出にくい素材採用などが 5D Mark II にも採用され、ゴミ対策は万全だからだ。EFレンズのリアキャップもゴミが出にくい素材に切り替えるなど念が入っている。それでも付着してしまったゴミについては、ゴミ情報をもとにDPP で消すというソフトウェアによる補正もあるが、ゴミを消した跡が顕著に現れてしまうことが多々あるため実用性はイマイチだ。
ライブビューは、筆者の “独断" による分類上、第二世代と呼ぶ。第一世代は 1Ds/1D Mark III 、40Dなどに搭載されたもの。いちおう実用レベルとなっていたがコントラストAF は非搭載だったし、撮像素子が発熱するため数分で強制終了してしまい、電池の消耗も激しいなど使い勝手はイマイチだった。コントラストAF が搭載されたKiss X2 はさしずめ第1.5世代。ただ第一世代の弱点はそのままだった。
そして第二世代がEOS 50D と5D Mark II で、第一世代の弱点を克服し、数十分以上の連続ライブビューも可能となり電池の消耗も少なくなった。顔認識AF も搭載され、ライブビューによる撮影領域は大幅に拡大した。
実際、筆者は積極的にライブビューを活用している。たとえば寝そべったモデルを真俯瞰 (真上) から撮る場合、三脚にカメラをセットすると光学ファインダーを覗くことが非常に困難だったり不可能な場合もある。。そんな状況でもライブビュー画面なら見える。フレーミングをライブビュー画面で行い、ピントは顔認識によるコントラストAF にまかせる。5D Mark II を含め、EOSデジタルのコントラストAF による合焦は相応に時間を要し、通常のポートレートでは実用に耐えないが、動きのほとんどないポーズなら問題ない。
残念ながら、画面上で顔が逆さまに写る状況では、顔の認識率は極端に落ちて稀にしか認識しなくなる。そういうときは他のモードを選べば、ほぼ画面隅々にAFポイントが設定できる。5D Mark II の顔認識は単にピント合わせを行うのみで、顔優先露出やWB や色調を調整する機能はない。
コントラストAFは、光源の色温度にピント精度が影響を受けないというメリットがある。位相差AF および光学ファインダーによるMFでは原理的に光源の色温度の影響を受け、たとえばタングステン光や夕陽など色温度の低い光源では正確なピント合わせは不可能だ。5D Mark II の位相差AF には光源の色温度による誤差を補正する機能が搭載されてはいるが、完璧に補正するまでには至っていない。位相差AF が苦手とする光源ではライブビューによるコントラストAF が非常に有効というわけだ。
惜しむらくは、5D Mark II では絞り開放状態でしかコントラストAFが動作しない。EF50mm F1.2L USM のようにF値によってピント位置が移動してしまうレンズでは、開放で完璧にピントを合わせても開放以外のF値に設定して撮ると間違いなくピンボケになってしまう。絞りのプレビューボタンを押して実際に絞り羽根を絞り込んだ状態でコントラストAF が動作してくれれば、F値でピント位置が移動してしまうレンズでも非常に使い勝手が良くなるはずだ。
その絞りプレビューボタンだが、押し続けていないとプレビュー状態が保持できないのは難点。例を挙げると、ライブビューはTS-E (シフト) レンズ使用時に有効で (アオリ効果はライブビューの方が光学ファインダーよりも確認しやすい)、本当なら実際に撮影するF値の実絞りでアオリ効果を確認しながらレンズをシフトさせたいのだが、絞りプレビューボタンを押し続けつつレンズまでも操作するのはほとんど不可能。かつてのFDレンズ時代のカメラには機械的に絞りプレビューをロックする機構が設けられていたが、5D Mark II にも電気的 (電子的) に絞りプレビューをロックできる機能を搭載して欲しいと思う。
EOSデジタルとしては初の動画撮影機能が搭載された。それもフルHDで。実際、静止画 (写真) のプロよりも映像作家の方が 5D Mark II に注目しているといっても過言ではない。というのも、36×24mmという撮像素子は、映像機器としては巨大な部類に入るからだ。
発売当初のファームウェアでは、動画撮影はシャッター速度、絞り値、ISO感度がすべてプログラムAE のみの制御となり、F値の自由な設定はできなかったが、その後のファームウェアのバージョンアップ (Ver.1.1.0) によって、シャッター速度、絞り値、ISO感度をマニュアルで設定できるようになった。これによりフルサイズセンサーを活かせられるようになり、再び注目度が高まったのも事実だ。
業務用映像機器には同等サイズの撮像素子を持つ機種もあるにはあるが、1日のレンタル代だけで軽く 5D Mark II が買えてしまうほど高価。その点、5D Mark II は低予算で巨大撮像素子による映像表現を実現できるので、映像作家の注目を集めて当然だろう。実際、5D Mark II で撮影されたPV (プロモーションビデオ) などの映像作品もある。
数々の新機能を搭載し、高感度ではプロ仕様機の 1Ds Mark III も凌駕する画質。レスポンスや耐久性・耐環境性ではプロ仕様機に一歩ゆずるかもしれないが、プアマンズ1Ds とか1Ds のサブ機ではなく、独立・自立したカメラと捉えたい 5D Mark II 。筆者も5D Mark II と 1Ds Mark III とを状況や目的によって使い分けており、いまやなくてはならない存在。フルHD動画撮影機能も含め、新世代 EOSデジタルの指標ともなるべきカメラだと思う。
(野下義光)