ペンタックス K-x でまず話題となったのは100種類のオーダーカラー。レギュラーカラーの黒、白、赤を含め、ボディカラーは全20色、これにグリップ5色を組み合わせてオーダーが可能というこれまでにない試みだけに注目されるのは当然だろう。
デザインとサイズは K-m とまったく同じで、曲線を使ったやさしい雰囲気。これにうまくカラーバリエーションを組み合わせれば、まさに女性好みのカメラに仕上がるだろう。サイズは男性の手にはちょっと小さく感じるくらいだ。重さは515g とSRユニットの軽量化によりわずか10g だが軽くなっている。
そのいっぽうで、K-x はカメラとしての機能も格段に向上していて、1,240万画素CMOSセンサーと新画像処理エンジン PRIME II により、ライブビュー撮影、ISO6400までの高感度常用域、秒4.7コマの連続撮影、HD動画撮影、レンズ収差補正などが可能になり、小さなボディに上位機種の機能がてんこ盛りされている。
たとえば暗所などにおける高感度撮影だが、K-x ではカスタム設定によりISO12800の感度も利用できるようになったのはありがたい。K-m の上限である ISO3200で撮影して K-m と出来上がりを比較してみたが、K-x の画像はノイズも抑えられていて実用可能 (K-m も十分実用にたえるが) 。さらに上の拡張感度 ISO12800 にも挑戦してみたが、個人的な感想では十分使えると思う。
そういった多機能ながら、ふだんよく利用する機能とメニューで切り替える機能が上手に振り分けられていて操作も分かりやすく、慣れが必要だと感じるところもなかった。ただし K-m から買い換えた場合には、ボタンの位置が同じでも操作内容が変更されているから、扱いに戸惑うかもしれない。画質は充分で、解像感の高さは K-7 をしのぐほど。K-m から買い換える価値も十分にある。
K-m では5点のみだった測距点は、上位機種の K-7 同様に11点が搭載され、ワイドフォーカスエリアを利用して、より手軽にAF撮影できるようになった。操作はメニューから行うのが面倒だが、AFフレームを任意に選ぶことができるので、構図を優先した撮影もこなせる。ただ、合焦部分を知らせるスーパーインポーズがないのはちょっとさみしい。
連写性能の向上も評価したい点だ。秒4.7コマ撮影は、兄貴分の K-7 の秒5.2コマに肉薄するもの。K-m (秒3.5コマ) と比べれば体感的にもかなり速くなり快適になっている。動きの速い被写体もシャッターチャンスを逃さずに捉えることができる。JPEGなら17コマまで撮り続けられるのも実用的なレベル。ただ低輝度の条件でAF-C (コンティニュアスAF) にして動いているものを撮影すると、連写速度が落ちたり、連続撮影コマ数も4コマや5コマあたりで一瞬止まったりすることがあった。
K-x では、ライブビューと動画撮影という新しい機能を搭載している。ライブビューへは、専用の[LV]ボタンですぐに切り替えられる。AFはコントラスト検出方式で、16人まで顔認識機能も搭載され、まるでコンパクトデジタルのように構えて記念写真やスナップを写せる。ライブビュー時に表示される画像の解像度が低いのか、6倍に拡大したときにジャギーが見られた。できれば、もう少し拡大して厳密なピント合わせをしたいところだ。
動画は、1280×720のHD動画を写せる。ファイル形式はAVI 、圧縮方式はMotion JPEG とパソコン編集と親和性が高いのがいい。カメラにマイクも内蔵しているが、モノラルだ。
K-x にも、K-7 でおめみえしたペンタックス独自のホワイトバランス・プリセット 「CTE」 が搭載された。一般にAWB (オートホワイトバランス) が色温度の違いが色に与える影響を打ち消すように働くのに対し、CTE はその逆に補正する、いわば強調機能。下の作例のように日陰の滝をCTEで撮影すると、日陰なので青みがいっそう強調される。もちろん通常のAWBで撮影してもなんら不満はなく補正される。
また、K-m のデジタルフィルタのような特殊効果ではなく、K-x では本格的なHDR撮影が可能となった。3枚の露出が異なる画像をカメラ内で合成し、ハイライトからシャドーまで再現した画像を作り出す機能は、最近はデジタル一眼の定番となりつつある。通常の撮影では白とびや黒つぶれが起きてしまう輝度差の大きなシーンで効果を発揮する。ただし、HDRの撮影に際しては必ず三脚を使って撮影しよう。重ね合わせる関係上、動く被写体には適さないことも知っておこう。
もうひとつ、クロスプロセスモードの搭載は、この K-x がいち早く採り入れた機能だ。クロスプロセスとは、フィルムの現像作業を規定通りに行わないことで (リバーサルフィルムをネガフィルムの現像液で現像するなど) 、その結果偶然に生まれる発色やトーンの仕上がりを楽しむもの。K-x では撮影時にトーンカーブ、彩度、コントラストのパラメーターをカメラがランダムに変えて、同じような仕上がりを楽しむことができる (JPEGのみ) 。予測できない意外性が、写って当たり前となった写真にワクワク感を追加してくれる。
(小林義明)