EOS 7D を使ってすぐに、従来のEOSシリーズとは “ひと味” 違った素晴らしい点をいくつか発見した。目立たないところにもきめ細かな配慮がなされていることにも感心した。そのひとつは、ホールディング性だ。
もし、EOS 50D や 40D 、あるいは EOS 5D や 5D Mark II のユーザーなら見比べてみるとよい。グリップまわりの形状が微妙に違うのがわかると思う。7D はグリップ部の縁に少し凸部があり、右手でグリップを握ったときにその凸部に指先がしっかりと引っかかり、安定感と安心感を感じさせてくれる。指先がほとんどズレないのだ。
また背面の、親指で押さえつける部分もスペースが少し広くなって、親指のポジションの自由度が増した。これらのちょっとした違いで、手の大きさにかかわらずグリップが大変に握りやすくなって、撮影スタンバイ状態で右手だけでカメラをホールドしていても疲れにくい。軽くて小さなカメラでも、ホールディング性がよくなければ重さと大きさを感じたりするものだ。逆に、ホールディング性が良ければ、実際の大きさや重さをそれほど感じさせないことがある。
ファインダーの視認性がとても良いことにも感心した。7D も含めて、最近のデジタル一眼にはライブビュー撮影ができる機種が多くなって、わざわざファインダーを覗かなくても撮影が可能にはなっている。しかし、カメラをしっかりと顔の前で構えてファインダーを覗きながら撮影するという基本スタイルは大切。このへんのことがキヤノンはよくわかっているからこそ、EOS 7D ではファインダーの視認性に徹底的にこだわったようだ。
EOS 50D などのファインダーの見え具合と比べると飛躍的に良くなっている。視野率が約 100%になったこと、ファインダー倍率が等倍になったこと (キヤノンのAPS-Cサイズ EOSシリーズでは初) 、アイポイント長が22mmあること、そして明るくてクリアなファインダースクリーンで、かつピントの山がとてもつかみやすくなった。
すべての一眼レフカメラは、視野率をかぎりなく100%に近づける努力 (完全 100%は理想) をすべきだが、そうした精密なファインダーは、設計はもちろん、とくに製造技術、そしてコスト面でも極めて難易度が高くなる。だからこそキヤノンの場合は、EOS-1D 系などの高価なカメラにだけ視野率約 100%ファインダーをおごってきた。
ところが、EOS 7D で初めてミドルクラスの機種にも視野率約 100%ファインダーを採用したことに注目したい。「写真は引き算」 とも言われる。低視野率のカメラでは、ファインダーでどれだけしっかりと引き算のフレーミングをしても、できあがった写真の周囲に余計なものが写り込んでしまっていることが往々にしてある。高い視野率のファインダーであるほど、自信を持って 「引き算」 撮影ができる。
ファインダー倍率が等倍になったことで、ファインダー画面もより大きく見える。AFのピントのチェックもしやすくなり、さらにMFでのピント合わせもスピーディかつ確実にできるようになった。接眼部の光学系も一新して、クリアで色ズレなく見えるように工夫していることも高く評価したい。
EOS 7D のファインダーでもうひとつ注目しておきたいことは、これもEOSシリーズのカメラでは初めて液晶を内蔵させたファインダースクリーンを採用していることだ。これにより、AFの測距枠やグリッド (格子線) を表示させたり、素早く切り替え表示することができる。
EOS 7D はAPS-Cサイズ相当の約 1,800万画素CMOSを採用している。約 1,510万画素のEOS 50D と同じサイズのCMOSセンサーであるが、20%ほど画素数が多い。単純計算すれば、一つ一つの画素あたりの開口面積は50D に比べて小さくなり、集光効率も悪いはずだ。結果的に階調描写力も低下し、さらには高 ISO感度になるほどノイズが目立ってくる…のではないかと心配していたのだが、実際はその予想を覆し、7D は素晴らしい画質を見せてくれた。高画素化は画質低下を招く、と画素数アップに反対していた人たちは、その考えを改めざるを得ないだろう。
EOS 7D の常用 ISO感度は ISO 100 〜 ISO6400 までと幅広く、さらに感度拡張機能をONにすることで ISO 12800相当の超高感度撮影もできる。ただ 「撮れる、写る」 だけではなく、十分に実用範囲にある。いささか大袈裟だと受け取られるかもしれないが、APS-Cサイズ相当の撮像センサーを採用する現行のデジタル一眼レフカメラのなかでは、EOS 7D の高感度画質はナンバーワンではないかとさえ思う。新開発のCMOSセンサーの素性が大変に良いこと、そしてDIGIC 4 を贅沢にも2つ使って高速できめ細かな画像処理を行っていることの効果が発揮されているからだろう。
ISO100 の画質と ISO200 〜 ISO400 の画質を拡大して子細に見比べても、ほとんど見分けられないほどに高画質であることに感心する。だからEOS 7D を上手に使いこなすポイントのひとつは、いかに ISOオートの撮影機能を活用するかにかかっている。撮影シーンが暗くなると ISO3200 の高感度まで自動的にアップしてしまうことがあり、ファインダー内表示をよくよく注意していなければならないが、被写体がそれほど暗くない場合には低感度を保持し続けてくれ、よりブレの少ないシャープな画像が得られる。この ISOオートと手ブレ補正 (IS) レンズを組み合わせることで、到底不可能だと思われていたようなシーンでも気軽に手持ち撮影できるということを知っておいて欲しい。
EOS 7D では、操作ボタンの配置を従来の EOSシリーズから少し変更しただけではなく、新しい操作部を設けたり、カスタマイズ機能を盛り込んでいる。操作ボタンのカスタマイズとは、よく使う機能を自分がもっとも操作しやすいボタンに割り当てられるものだ。
新しく設けられたボタンでぜひ活用したいのは、クイック設定画面をON/OFF表示するための 「Q」 ボタンと、JPEG撮影中にワンプッシュするだけでRAWの撮影ができるようになる 「ワンタッチRAW+JPEG」 ボタン、そして、そのワンタッチRAW+JPEG、AEロックやFEロック、ファインダー内水準器表示、AFフレーム切り替えなど頻繁に使用する機能をカスタマイズ割り当てができる 「M-Fn」 ボタンの 3つだ。
なかでもいちばん活用して欲しいのが、「クイック設定画面」 だ。「Q」 ボタンによって使い勝手が飛躍的に向上した。クイック設定画面は自分が設定した主な撮影機能の状態を、3.0型の大きな液晶モニターに集約して一覧表示し、それを見ながらダイレクトに機能を選んだり、設定したりできる。メニュー画面に切り替えて、設定項目を探し出して…といった煩雑な操作をしなくてよい。一度この便利さにハマってしまうと、他の方法で操作をしようとは思わなくなってしまうほどだ。
このようにEOS 7D では画質が向上しただけでなく、操作性など使い勝手全般にわたって大幅な改良が施されていて、使っていてじつに愉しい、なんだかとってもいい写真が撮れそうな気分にさせてくれる、そういった意味でEOSシリーズ中、ナンバーワンだと言っても過言ではない。
(田中希美男)